猶太情苦01

好きなじょーくをひとつ思い出した。

ビジネスマンが忙しく行き交う往来に距離を挟んで二人の乞食が座って居た。
ひとりは、「仕事のない哀れなユダヤ人です。なにとぞ、この私にお恵みを!」という目立つ看板を首からさげていた。
忌々しく思った人々は、これみよがしに、別の乞食に小銭を投げいれるのであった。
何日もそんな光景が繰返された。
そのうち、一人の紳士が首から看板をさげている乞食に近づいて言った。「本当にあわれな男だな。まだ気づかないのか?そんな看板さげてるせいで、みんなあっちの物乞いに投銭してるんだよ! 彼のようにもっと謙虚にしてたらどうだい!?」
紳士が去ってから、首から看板をさげた乞食はのっそり立ち上がりもうひとりの乞食に向かって言った。

「笑わせやがる、さっきの紳士野郎、おれたちユダヤ人に商売の講釈垂れていきやがったぜ!」

[追記] 白目高さんより「オチが見えやすいのでは?」と指摘されました。やっぱり誤魔化すことはできません。じつは、「笑わせやがる」を使いたかっただけなんです。私にとっての、2013年言葉大賞なのです。