『フランク・ザッパ自伝』(河出書房新社)

町山さん出演のラジオ番組でジェイムス・ブラウンのアレが言及され即座に以下を連想したので、図書館で借りて確認いたしました。

学校でデカイ面している体育会系男子+チアリーダー(ともに土民富裕階層)と激しく対立する、ミュージシャン系(移住民非富裕階層)に属するザッパの回想です。

引用させていただきます:PP.56-57

与えられた任務を氏名割愛嬢が完遂するには、俺を含む全校生徒を起立させる必要があった。彼女はマイクに向かって「全員起立!」と叫び、人を小馬鹿にするような調子でこう付け加えた。フランク・ザッパ、あなたもよ!」
俺は立ち上がらなかった。場内は異様な沈黙に包まれていたから、彼女の栄光の午後をこなごなにする質問を俺が発するのにも、PAシステムの助けはまったく必要なかった。「あんたこそクソして寝たらどうだい、(俺はいい人なので氏名は割愛する)ちゃんよ!」当時はまだ、こんな言葉遣いをしてはいけないことになっていた――とりわけ、両手に薄紙でこさえたポンポンを持ち、週末になるとぴょんぴょん飛び跳ねているようなお嬢さんに対しては。彼女は泣きながらしゃがみこんでしまい、舞台からおりるのにも、ほかのポンポン娘たちの助けを借りねばならなかった。あれこそは、白人女性によって演じられたジェイムズ・ブラウンの名高きケープ・ショーの物真似として、西半球全体を見渡しても最悪の出来だったに違いない。

いやー、しかし、面白さ抜群だ。
冒頭の、爆発物研究者としてのキャリアが終わるまでの顛末からは、自由すぎた時代のアメリカへの憧憬が俄かにわきおこってきましたよ。
*以前読んだのは白夜書房の旧訳でしたが、今回のは河出書房新社の新訳(茂木健訳)です。

フランク・ザッパ自伝

フランク・ザッパ自伝