いやほんとそうなんです。
Nさんのことをこぼしたところで所詮我々は同類なんですよ。
相手が有卦に入ったと見るや早速ケチをつける、と同時に、それによって自嘲気味となった相手の気づかぬ長所を指摘してあげたりもする……天性の天邪鬼なのかもしれません。

ただNさんの畏敬すべきところは、相手を見て態度を変えるような卑劣な態度をとらない性質にあるのかもしれません。近所のお店で、某老舗出版社で某大文藝者の担当だった編集者氏と出会い、「あなた某大文藝者の担当だったんですか……しかしあの方の作品ダメですね〜」とカマしたこともある豪の者でもあるんです。編集者氏の顔色がサッと変わったのを見てすかさず、「でもあのひとの詩は素晴らしいんですよ」とフォローし事無きを得た――というより――それが縁で仲良くなったんだそうです。初対面の挨拶にかようなる言辞を弄することなど俺には到底真似できません。無理やり真似することができたところで、それが機縁となって仲良くなるなどというのは天然技としか思えません。

村上龍コインロッカー・ベイビーズ』では、主人公が「俺たちは、コインロッカー・ベイビーズだ。」と決め台詞を吐くシーンが思い出されますが、Nさんと余暇に街歩きしている際心中で “We are the 'zero-sum'ers!” (「俺たちは、ゼロ・サマーズだ」)と決め台詞を吐いていることがあります。勿論“俺たち”と称することに若干の僭越を感じてはをりますが……。

ゲーム理論 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

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