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それから昔から住んでいるひとのほうがいいひとたちだなんてことも全く思っていない。
一寸先の角にあった邸宅の先代はとても気のいい御祖父さんで、うちの亡祖母も好感を抱いていたらしいのだけど、某有名企業に勤めその後会社をおこした息子夫婦が滅茶苦茶嫌な人間で、なぜか離縁したあとの二番目の女性もすこぶる嫌な女で、番犬のつもりで飼っていたらしい大型犬が宅配屋さんの手に噛み付いたとき、「あら〜だめよ〜」とその畜生にやんわりと声をかけはしたものの、手をおさえ呻きながらしゃがみこんだドライバー氏を唯無関心なまなざしで眺めているのを目撃したこともあった。あれも一種の儀礼的無関心だったのだろうか。
数年前その一家は夜逃げした。
ざまあ見ろとは思わなかった。なぜなら庭木がたくさん植えられていて、数十年の間、住宅としては好い印象を周囲に与えていたからであり、次に債権者によって建てかえられるのは間違いなくコンクリマンションだと分かっていたからだ。