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'80年代後半、大晦日から元旦に変わる瞬間、街全体が「わっ」となるのが聞こえるものだった。どこで鳴らしていたのか見当もつかぬが、ポンポンと打ち上げ花火が響くこともあった。ほんと言うと、年が変わることでなぜあのように盛り上がるのかよくわからなかった。あんまり屁理屈ばかり言うのもなんだから、一緒に年を越す友人の前では「おめでとー」とか云って笑っていた。
まち全体が「わっ」と歓声をあげるのを最後に聞いたのは、2006年サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会で、豪州代表相手に最初の得点を獲得したときだったかと思う。「わーっ」という歓声がご近所さんから響いてきた。そのあとはずっと静かだったので負けたのだろうなと予感したらその通りだった。
わたしの記憶にあるかぎり街全体が最も盛り上がったのは、2002年サッカー・ワールドカップ・日本韓国大会でロシア代表チームを下したときだったと思う。当試合に当たる時間はスターバックスで本を読んでいたんだけど、客はわたし含めてたったの2名だった。街に出ると、若いひとたちがいたる所で「ニッポン!」と勝鬨を上げていた。
吾國が日露戦争に勝利したあとの提灯行列もたいそう盛り上がったのだろうなと想像した。