おおきな割烹旅館(旧家)で仕事をしている。
この店は当代一の名人と謳われる老噺家さんが経営しており、梨園の方たちからも都合のよい隠れ家として御愛顧賜っているもよう。
俺はまだ仕事に就いて日が浅いのだが、なぜか、名人・名優たちに信頼されている。
或る中堅の歌舞伎役者さんからどうしても今夜は志ん朝師匠と飲み明かしたいのでなんとかここに呼んできて欲しいと頼まれる。
いつも師匠のために空けている客間を覗いたら御弟子さんが独りのんびりしているので予定を聞いてみると、今日は師匠、三宅坂から矢来町に直帰だよと仰る。
そのことを歌舞伎役者さんに伝えようとするが姿が見えない。
(場面一転)
真夜中。
割烹旅館の庭から外へでて、どこかの研究施設のような鉄筋・コンクリの建造物を抜けると断崖に海。
断崖に沿った小道をひとり歩きしている女性の後ろ姿が見える。俺は海を見下ろす。鮫がうようよしているのがうっすらと確認できる。
と、突然、電車の一輛分くらいありそうな、お化けクラスのホオジロザメが崖のうえまで身を乗り出してきた。直ぐ後にもう一尾も。
歩行している女性にここまで戻ってくるように叫ぶ。
ホオジロザメにスポットライトが当たる。
とんでもないスケールに唖然としていると、今度は、そいつ等と同じ大きさの、サングラスをかけた水着姿のラテン女が断崖上までザバッと身を乗り出してきた。鮫と肩を並べるかのような状態で口を閉じたり開けたりしている。
女の口にも鮫と同じ歯がならんでいるのが見える。人間を啖らうつもりなのだろう。こいつらは皆ゾンビの類に違いないと思いながら観察している俺。
――覚醒――