なんでなのか見当がつかないが、我が家の電話機がまだぎりぎり黒電話だった時代、突然N(♀)から電話があった晩夏を思い出した。
「聞いてよ、もうびっくりしちゃった」
「なに?」
「きのう公園にいたらね、車の中からこっちを見てるカップルがいてさ」
「へー」
「しばらくしたら全裸で出てきて、わたしたちが座っていたベンチの対面で堂々とヤリ始めるのよ!」
「わたしたち?」
「いや、その、学科の男子が卒論のことで話がしたいっていうから……」
「ふーん。いやしかし、真昼間にそんな大胆なプレイをするなんて、警察に御用になることを覚悟した決死のまぐわいだよな」
「真昼間のわけないじゃん! 夜中だよ、よ・な・か」
「夜中の公園で学科の男子学生と卒論の相談かよ(ニヤニヤ)」
「いいじゃん別に……」
「Hはそのこと知ってるのかい?」
「……」

あのとき 悪女N は、オイラがその話を彼女の純朴なる恋人 H に伝えることを見越して、それが別れのきっかけになればとの算段でいることが見えみえだった。浅はかなヤツめ。オイラは誰にも話さなかったよ。ここに公開するのが初めてである。多分。