頭上を越えるときだけうるさいプロペラ機/ちぎれた白雲、黒雲、筋雲/(レンズのピントを几帳面に合わせたかのような)夕燒け空/丘の普請場に聳えるクレーン
なぜか今日は、そんな遠景が印象深い一日でした。


住宅地をめぐるひときわ狭い区道では、五歳くらいの男児が「れ、ま、と」と叫びながら路面標識上でステップを踏んでいて、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが「あははは、ちがうよ『止まれ』だよ」と嬉しそうに笑っていました。

わたしは、まさにこんな光景が鈴木六林男の最終句集『一九九九年九月』(東京四季出版社)に詠まれていることを思い出してゐました。

れまと踏みとまれの方へ入学児  鈴木六林男

夕焼ける国の子供ら減ってゆき     仝

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