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- 本当言うとね、おらあとにかくファッションについては理想があったんだけど、それに見合うものがどこにもなかったんだよ。
- そこのお前、なに笑ってんだ。
- 男子向けのファッション雑誌なんて、コラムや読み物頁以外はほとんど無視だった。
- 黒目高さんが購読していたファッション雑誌なんかでも「これいいなあ」と思うのは欧米のひとたちの普段着だった。さっそく真似しようにも日本で売られているものとそもそも染料や服地が違うことに気づいた。
- そのとき「ああフェンダーと同じだなあ」と呟いたことも確かだ(アホ丸出し)。
- べつに何着ようとどうでもいいやあと分別がついたあとになって、理想に描いていたものに近いモードが現れた。
- いまでは死語となったであろうグランジと呼ばれたやつね。
- あんなのだったら80年代前半にだって十分コーディネートできたはずだと思うひとこそ記憶を改竄しているよ。
- 当時はあんなふうにカッコよく、かつ、だらしなく着こなせる形のものは無かった。とくに冬場はね。
- それからブーツや革靴の種類だな。
- HC のひとたちは安全靴できめていたけどね。
- いや、そうだね、確かに安価なものを格好よく着こなしているひとはいた。
- オイラは単にファッションへの意欲が欠けていたということだ。