昨年、M・レヴィン『壊れ窓理論」の経営学 犯罪学が解き明かすビジネスの黄金律』(光文社)という本を図書館で見つけて読んで見たところ、昨年読んだ本のなかで最スカな一冊だったことを思い出した。

割れ窓理論」については『ティッピング・ポイント』(飛鳥新社)というビジネス本で言及されているのを読んで少なからず興味を抱いていたので、ようやっと理論の本丸に攻め込んだものに出会えたと思いきや、後半、『ティッピング・ポイント』の著者にヒアリングした内容で頁を埋めていることからもうかがえるように(元に戻ってどうすんのよ?)、“流行語”を拝借して経営のノウハウを伝授しようとしている本にすぎないことが分かった。

但し、飲食店など消費者と直接向き合う商売を始める方たち、とくに個人店を立ち上げようとする方たちにとっては非常に大切な事柄が書かれているので、そういう方たちにとっては得るものがあることは否定できない。

でもまあ、<店内の小さなペンキの剥がれ・トイレの汚れなどなど、お客様の目線に立たないと気づかないことが多々あります、その部分を放置しているととんでもない事態に陥いることもある>ぐらいの事は多少なりともマーケティングに関わった人間なら(別に関わっていなくとも)誰でも考えつくんじゃなかろうかと思えるし、割れ窓を放置しているお店が論外なのは常識の範疇なので、“私たちのお店に「割れ窓」がどこかにないか、いつも注意しよう!”という様な「割れ窓」をアナロジーとしたモットーにはどうしたって強引さを感じてしまう。