佐々木邦『苦心の学友』(少年倶楽部文庫)

気づいたらニ冊所持していた。PCを起動させる度に細切れに読み継いだ。

旧藩主子息の御学友に選ばれた元忠臣一家の正三君が、お坊ちゃん照彦さまの我儘、甘えた態度に苦心しながらも共に成長していくという御話。

昭和二年から四年にかけての連載なので、もはや歴史小説ともいえる状況設定であり、現在では廃れてしまった言葉遣い・死語のオンパレードなのではあるが、ユーモアのセンスというやつは八十年くらいではさほど変らないことが分かる(子供向けなのでなおさら)。もちろん、佐々木邦がすぐれた作家だったからこそではあろう。

寒がりの学童達が放課後の教室でダルマストーブを囲む場面と、ストーブを管理する公使いさんが燃料のコークスをケチケチ供給しているくだりで、それが私と、作中学童に該当する現在九十六歳くらいの方々との共通体験だということが分かる。

もしあの世代の方とお話する機会があれば「ぼくらの頃は金網で保護されてゐました。水滴を垂らすと一瞬で蒸発するのが楽しくて、莫迦のひとつ覚えでそればかりやつてましたねえ。お爺さん/小母さんの頃はだうでした?」などと切り出してみよう。

とはいえ、物語は私学が舞台であり、当時の国民学校では暖房無しだったのではないかと推察する。

アメリカ哲学 (講談社学術文庫)

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