「獏が燻製にされているぞ」 ― 深夜のNHK
数日前、風呂からあがってTVをつけると「NHKスペシャル ヤノマミ 奥アマゾン原初の森に生きる」というのがはじまった。ヤノマミというのはブラジルとベネズエラにまたがるジャングルに居住する部族であり原始的生活を営んでいるひとたちのことだ。
シャーマンの言葉によれば、ヤノマミの人間は死ぬと天に昇って精霊となり、その使命が了わるとアリになり、アリ生が終わるとその魂は消えるのだそうだ。「消える」の意味は番組を観ただけではよく理解できなかったが、仏教の「解脱」に近いのだろうか。
シロアリは聖なる存在のようで、母親は赤ん坊を産み落とすと、育てるべきか、そのまま植物の皮につつんでシロアリに食べてもらう(神に捧げる)べきかを一晩かけて決めるらしい。取材された母親は結局、赤ん坊をシロアリに捧げることに決めた。そのシーンを観ていると、ガルシア・マルケス『百年の孤独』が連想された。
さて随所で印象深かったのが、狩でしとめた猿や猪豚や獏なんかを屠殺したり、子供たちが猪豚の腹仔をおもちゃにしたり、ハンモックの中の幼気な少女が干猿の顔を齧って食べたり、矢に討たれた鸚鵡がバサバサ落っこちてきたりする、ゴールデンタイムでは間違いなく放映できないシーンだった。PG15くらいのレベルになるのだろうか。30年前だったら「金曜スペシャル」あたりで平気で放映されていた程度のもだと思うのだが、茶の間でこうした光景を久しく目にしていなかったことに気づかされた(いや、茶の間に限らずかな)。
一点どうしても気になったのが、田中泯さんのナレーション。陰気でアングラな調子がわざとらしく、正直白けてしまった。たしかに『野生の王国』(差別?というより、古すぎ?)みたいな明朗さではダメだろうし、(某局でやっている)クイズと折衷した番組の如く「感動をありがとう!(泪)」というわけにはいかぬだろうけども...。
- 作者: G.ガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arques,鼓直
- 出版社/メーカー: 新潮社
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