『顰蹙文学カフェ』
『顰蹙文学カフェ』をザッと立ち読み。
板前時代の車谷長吉さんは厨房で捕獲したネズミを出刃包丁で処理していたのだそうだ。毎朝。
そして、その出刃で捌いた鮮魚の刺身をお客に供していたらしい。流石。
当時は粘着シートがなかっただろうから、例の、粗忽者が足をはさんでバカを見たりするバネ式の罠だったのだろう。
さて、本を買わずに帰宅した深夜。やっぱり、さっそく台所に出やがった。
そう、クマネズミdeath。
夙に冷蔵庫の裏あたりに新しい鼠アナを開けたことには気づいていたのだが、面倒くさいのでそのままにしていたのだ。
我が家は築50年の古普請なので駆除はその都度対処するしかないと諦めている。横尾忠則さんの日記を拝見するとやはりネズミに悩まされていらっしゃるようで、出現頻度の高い時期は概ね我が家と重なっているようだ。
クマネズミは人間と同様に暑さと寒さが苦手であり、春と秋に動きが活発になるのだが、昨晩のように俄かに秋めいた途端に出没する様はいかにも野生動物らしい。
ネズミを見るといろいろと考えさせられる。
まず、その皃(かお)は存外かわいらしいのだ。
なき声も「ちゅーっ」というよりは「きゅー、きゅー」という感じなので、罠にかかったヤツから発せられるソレは殆ど「窮ゅー、窮ゅー」のように響き、まことに哀れみを誘う風情と相成るわけで、そんな小ちゃな敵でも殺めなくてはならぬ我が身の「業」の深さに悩まされるのだ。
しかしネズミたちは、蚤、雑菌、極悪なヴァイラス、雑草の種などを持ち込み、齧って家屋を傷める極めて厄介な生物なのである。足跡、体毛に付着した汚れなどもベタベタと家内に残していく。
じつは如上の実害に加えて迷惑なのは、ヤツらにより自らの奇想の被害者となることなのだ。
その奇想というのが、
映画『エイリアン』に登場するエイリアンなどは、すでに外見からして殲滅されてしかるべく族なのであるが、もしその(H・R・ギーガーが創りあげたところの)エイリアンが極めて友愛的な人類の味方である一方、あなたが能う限り想像できいる可愛らしい子供たちの姿をした‘X’が極悪非道の生物である世界に放り込まれたらどうであろうか......というもの。
ああ、嫌だ嫌だ。
唐突ですが以下は、Ernst Jünger, Storm of Steel, PENGUIN CLASSIC ,p43 からの引用です。第一次大戦の最前線でのネズミがいる風景を描写しております。
Hunting rats is a much-loved change from the tedium of sentry duty. A piece of bread is put out as bait, and a rifle is levelled at it, or gunpowder from dud shells is sprinkled in their holes and torched. Then they came squeaking out with their singed fur. They are repellent creatures, and I'm always thinking of secret desecrations they perform on the bodies in the village basements. Once, as I was striding through the ruins of Monchey on a warm night, they came oozing out of their hiding-place in such indescribable numbers that the ground was like a long carpet of them, patterned with the occasional white of an albino. Some cats have moved in with us from the ruined villages around; they love the proximity of humans. One large white tom with a shot-off front paw is frequently seen ghosting about in no man's land, and seems to have been adopted by both sides.