クワインと一緒にパースを読んだ邦人

『たまたま、この世界に生まれて』、鶴見俊輔、編集グループSURE

逸話の宝庫ですね。
各論を丁寧に分析・対照する仕方で斯界の全体像を浮き彫りにするような(書生好みの)展開はありませんが、日米開戦時にハーヴァード大学で哲学を学んでいたという、しかも、カルナップ、モリス、若きクワイン(チューター)らと接した(+ホワイトヘッドの講義も聴講した)という鶴見氏が、プラグマティズムを軸に来し方を振り返る内容となれば、面白くないはずはないと思います。

石本新、渡辺慧といった、(微妙な)ビッグネームのお人柄まで活写されているのが素晴らしいですね。

でも読んでいて一番印象的なのは、対論者のガチな質問に対して、誰それがある時どうしたこうしたといった自身の記憶や文物からの(同一の)情報を滔々と、あるいは、繰り返し語るという、鶴見先生のプラグマティック(老練)な物腰でしょうか。といっても、話に熱中するあまり相手の質問を忘れてしまったかのようでもあり、進行役の編者があきらめずに質問を繰り返すあたりに妙なおかしみを覚えました。

そして一番気になったのは、恩人・桑原武夫と鶴見氏とは俳句に対する見解が違うという一言。
で勿論、対論者は軽くスルー。
(現場ではなにか語られていたのかも知れませんが......。)


アメリカ哲学 (講談社学術文庫)

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